收藏

ルイヴィトンダミエアズールコピー編集

「たいへんですっ! お客さまが、いらっしゃいません!」  頭に響く声に眉をしかめ、だが次の瞬間、完全に目がさめた。 「お客というと、昨夜到着したおふたりのことか?」 「そうです。そろそろお目ざめかと、お部屋をうかがったら、寝台にも洗面所にもいらっしゃらないのです」 「おふたりとも?」  ピアズの問いに、家令は泣きそうな顔をしてうなずいた。すぐさまピアズは寝台にもどってガウンを羽織り、部屋を出る。 「部屋の中だけではなく、他もお探ししてみたのか?」  客室に続く幅の広い廊下を早足で歩きながら、あとをついて来る家令に訊ねた。 「はい。邸内はもちろん、裏庭も中庭も手分けしてくまなくお探ししました」 「早くに目ざめられて、朝の散歩に出られたのかもしれない!」 「ええ。そうも思いまして、近辺もお探ししたのですが、いらっしゃいません」  客室の前には別の家令が、おろおろとした様子で立っていた。ピアズの顔を見ると、まだ戻られていませんと首をふる。  家令に先導させて客室に入ったピアズは、まず寝台を確かめた。客人の性格なのか、寝乱れたあとはなく、ぴんと張った敷布には温もりも残ってはいない。 「客人の持ち物は?」  こちらですと示された先には、昨夜運び込んだ大きな荷物入れが据えられている。ためらいはあったがピアズは蓋を開け、中を確かめた。  丁寧にたたまれた衣類と、本が数冊。衣類の間に天鵞絨《びろうど》の袋があり、開けてみると青く光る石が出てきた。専門ではないがピアズにも、おそらく高価な宝石だろうとわかる。  中をあらためたと客人に知れないよう、ピアズはそっと石を袋にもどし、衣類の間にはさみ込んだ。そして心配げに立つ家令を振り返り、 「だいじょうぶだよ。じきに、戻っていらっしゃるだろう」
表示ラベル: